安来節は吉本興業にとってまさに救世主だった!計り知れない効果とは?

 

朝ドラ『わろてんか』で北村笑店のモデルとなっているのは、周知の通り

吉本興業です。

 

同社は日本最古の芸能プロダクションですが、今日に至るまでの道のりは

決して平たんではありませんでした。

 

幾度となくピンチに陥っていますが、何とかそれを乗り越えて成長し続けて

きました。

 

そして大正時代の同社のピンチを救ったのが、「ドジョウ踊り」で知られる

安来節だったのです。

 

 

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安来節は吉本興業にとってまさに救世主だった!計り知れない効果とは?

 

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吉本興業の前身の吉本興業部が安来節を寄席に導入したのは、

大正11年(1922年)ごろと言われています。

 

当時の吉本は大阪で30近くの寄席を経営しており、上方の演芸界の頂点に

立っていましたが、当時の経営状態は決してよくはなかったのです。

 

と言いますのも、活動写真館などの新たな娯楽に客を奪われていたからです。

 

特に活動写真は大正期にその品質や内容が大幅に向上したのに伴って、

かなりの人気となっています。

 

資料によれば大正9年(1920年)の大阪での主な興業の平均月収は、

平均的な寄席が約3万円程度だったのに対し、活動写真館は約21万円。

 

もちろん収容人員の差などもありますが、寄席の7倍もの金額を稼いでいる

ところには当時の活動写真館がいかに人気があったのかがわかります。

 

また当時の吉本は上方落語の人気の凋落にも頭を悩ませていました。

 

初代桂春団治など絶大な人気を誇る落語家もいましたが、当時の上方落語の

落語家たちは未だに古典落語をメインとしており、時代のニーズに合わなく

なっていたのです。

 

庶民の生活はもちろんのこと、文化までもが大幅に進歩した大正時代に、

依然として江戸や明治の噺ばかりの上方落語は徐々にナンセンスとなって

いったのです。

 

そのため落語が寄席の目玉になっていた当時の吉本の収益も、頭打ちに

なっていました。

 

大阪は明治後期から大正時代までは紡績業で発展し、明治44年(1911年)に

127万人だった人口が、大正7年(1918年)には163万人まで膨れ上がっています。

 

そのような状況にも関わらず吉本が収益を伸ばせていないのは、

やはり他の娯楽興行に客を奪われていたからでしょう。

 

さらに当時は大正3年(1914年)設立の宝塚唱歌団(宝塚歌劇団の前身)が

好評で、松竹も松竹歌劇団を立ち上げる動きもあって、吉本にとっては

新たな脅威も生まれ始めたころでした。

 

そんな中、吉本興業部が状況の打開策として目を付けたのが安来節でした。

 

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当時の大阪では東京経由で数年前から安来節の興行が端席などで

おこなわれ、好評となっていました。

 

現在では考えられないことですが、安来節の女踊りの生足は当時としては

エロチックで、それを目当てに多くの男性客が寄席に押し寄せていたのです。

 

そのため吉本せいの実弟の林正之助が安来節の本場の島根県に赴いて、

人材を発掘しています。

 

彼らは次々と大阪の花月の舞台に送り込まれて安来節を披露。

 

それを契機に上方はもちろんのこと、首都圏でも安来節の人気に火がついて

一大ブームを巻き起こしました。

 

最盛期には安来節の専門館がオープンしたほどですから、かなりの人気だったようです。

 

この安来節ブームによって吉本はこの時期の経営不振を乗り切っています。

 

昭和初期には同じく林正之助が仕掛けた漫才ブームが巻き起こって、

戦前の吉本の黄金時代が到来しますから、安来節はそこまでの橋渡しを担いました。

 

さらに後に吉本の名物社長として知られることになる正之助にとっては、

安来節がはじめての成功でした。

 

(林正之助)

 

当時は入社4年目で23歳の若者でしたが、この成功によって得た自信と経験は

大きかったはず。

 

後に仕掛ける漫才ブームの際にも正之助は横山エンタツやミスワカナなど

多くの無名の人材を発掘していますから、安来節での成功体験は大いに

役立ったはずでしょう。

 

このように安来節は収益面のみならず、吉本の中興の祖とも言われる

林正之助の興行師としての成長に一役買っており、その効果は計り知れない

ものになっています。

 

昭和期にはブームも沈静化してしまい、後に花月の舞台からも姿を消す

ことになる安来節ですが、吉本興業にとってはただの「ドジョウ踊り」では

ありませんでした。

 

まさに「救世主」と言っても過言ではない存在だったのです。

 

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